今週の一枚 おいしくるメロンパン『indoor』

今週の一枚 おいしくるメロンパン『indoor』


《色水になってく 甘い甘いそれは/君と僕の手の温度で 思い出を彩ってく/寂しくはないけど ちょっと切なくて/流し込んだ空の味》

昨年12月にリリースされたファーストミニアルバム『thirsty』の1曲目“色水”は、おいしくるメロンパンが、ロックによって君と僕のみぞ知る「瞬間」のきらめきを、聴く人すべての「永遠」のきらめきとして切り取ることのできてしまう類い稀なバンドであることをいきなり証明する必殺の1曲だった。
そして、そんな最強の名刺に続く“シュガーサーフ”、“5月の呪い”、“砂と少女”、“紫陽花“の4曲は、息もできないくらい濃密で高純度な出口なしの青春そのもの。時に掻き毟りながら、時に弾むように、時に妖しく、時に凛として、「あの渇きを忘れるな」と青春の呪いを心の柔らかいところにかけ続ける、可愛い顔して魔物のようなバンド=おいしくるメロンパンの原液が詰まったアルバムが『thirsty』だった。

そして9ヶ月ぶりに放たれるセカンドミニアルバム『indoor』。前作と同じく5曲入りだが、まず“桜の木の下には”、“look at the sea”、“caramel city”、“泡と魔女”という冒頭4曲が、3ピースのシンプルなギターロックサウンドのまま、格段にカラフルなアレンジと、フックに満ちたメロディと、表情豊かな演奏を繰り出せるようになったバンドの成長を4曲4様の形で見せつけてくる。前作では原液のまま迸っていたおいしくるメロンパンの毒入りのエッセンスがより計算されたバランスで心の柔らかいところに刺さってきて、それがこの『indoor』ならではの気持ち良さになっている。しかし、このアルバムの決定打であり、 “色水”と並んで初期おいしくるメロンパンの決定打となる楽曲は、ラストの“あの秋とスクールデイズ”である。


《情けないな あの日/裏切ったのは僕の方だった》

バンドの表現力が高まった今だからこそ放たれるソングライターのナカシマ(Vo・G)をロックに衝き動かすエネルギーの核。それは君と僕のみぞ知るスクールデイズが残した心臓にのさばる鈍痛だ。その痛みの弾丸で「瞬間」と「永遠」を一気に撃ち抜く必殺中の必殺の1曲。内向きの青春の破壊力、ここに極まれりと手を叩きたくなる痛快なエンディングだ。
『thirsty』、『indoor』を並べて、“色水”から“あの秋とスクールデイズ”までを駆け抜けるように一気聴きするのもオススメの聴き方です。(古河晋)
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