今週の一枚 BRAHMAN 『尽未来際』

今週の一枚 BRAHMAN 『尽未来際』 - 『尽未来際』初回限定盤A『尽未来際』初回限定盤A

BRAHMAN
『尽未来際』
2015年8月12日(水)発売



おそらく誰よりもスリリングに、90年代末のロックシーンにおいてノーフューチャーなパンク爆走感を体現していたBRAHMANが、自らの20年史を封じ込めたアニバーサリーアルバムに『尽未来際』(仏教用語で「永遠の未来」の意)という題名を冠することに、多くの人が感慨と感激を覚えていることと思う。初期ミニアルバム2作『GROPE OUR WAY』『WAIT AND WAIT』と1stアルバム『A MAN OF THE WORLD』&2ndアルバム『A FORLORN HOPE』までの楽曲を凝縮した「THE EARLY 10 YEARS」、そして3rdアルバム『THE MIDDLE WAY』から最新シングル曲“其限~sorekiri~”までの足跡を綴った「THE LAST 10 YEARS」の2枚組・全42曲。ここにあるのは、「バンドの『青春期』と『成熟期』」といったステレオタイプな分類などではない。ひたすらに自問自答を繰り返し瞬間瞬間を極限爆発させることで、目の前の現実を震わせ切り拓いてきた初期の「刹那」な生き様と、熾烈な現実と向き合いながら終わりなき闘いの道を行くことを引き受けた現在の「永遠」の覚悟――20年という長い時間の中でBRAHMANが体現してきたふたつの精神性が、2枚の鮮烈な対比の中で巨大な渦を巻いている。そんな作品だ。

“FOR ONE'S LIFE”“SEE OFF”“ARRIVAL TIME”“ANSWER FOR…”など、現在もなおオーディエンスの魂を燃え上がらせている「THE EARLY 10 YEARS」収録曲群の性急かつダイレクトな訴求力。そして、世界という名のカオスと対峙しつつ、自らもその一部であることを噛み締めつつ、カテゴライズ不能な爆風の如きロックを轟々と響かせる、“THE ONLY WAY”“初期衝動”“警醒”といった「THE LAST 10 YEARS」期の壮絶な音像……結成から間もなくバンドを離れていったかつての盟友を想い《恨み抱くな/挫折責めるな/過去を問うな/その手離すな/拒絶 証明 共有 永遠/堂々》とひときわ切実に歌われる最新楽曲“其限~sorekiri~”が、バンド内のストーリーという枠組みを越えて「人はいかに他者を許し、誇りを持って生きるべきか」という壮大なテーマを聴く者に喚起させ得るのはひとえに、パンク/ハードコアを真摯なる「祈り」の表現として研ぎ澄ませ、鍛え上げ、血肉化してきたロック修験者たるBRAHMANだからこそだ。東日本大震災とその後の日本の混迷の中で、彼らの表現がさらに強度とスケール感を増したのは必然以外の何物でもない。渾身の「刹那」を途方もないほどに積み重ねた先にしか「未来」は存在しない――そんな気の遠くなるような決意すら自らの日常として受け入れた彼らの/TOSHI-LOWの「今」を、20年の重みとともに今作は厳然と証明している。(高橋智樹)
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