今週の一枚 東京スカパラダイスオーケストラ『Paradise Has NO BORDER』

今週の一枚 東京スカパラダイスオーケストラ『Paradise Has NO BORDER』 - 『Paradise Has NO BORDER』『Paradise Has NO BORDER』

オールタイムベスト『The Last』から、企画盤『TOKYO SKA Plays Disney』、『TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA~Seleção Brasileira~』、またコラボシングルの数々もあったので不在感はなかったのだけれど、オリジナルアルバムとしては2年7ヶ月ぶり。東京スカパラダイスオーケストラが、その大人げないほどの熱量をもって未来を指し示す傑作『Paradise Has NO BORDER』をリリースする。

スカパラが、ゲストボーカリストを招く作風をひとつのスタイルとして確立したのは、2002年の『Stompin’ On DOWN BEAT ALLEY』の時期だ。このときキャリア初のチャート1位を記録している。歌モノのコラボ曲はスカパラにとって、「ゲストにぴったりな曲と歌詞を用意する」という愛と理解の技を披露する機会にもなっていた。

しかしスカパラのコラボ曲は近年、その趣向を様変わりさせている。個性の塊のようなソングライターである尾崎世界観との歌詞共作は、「合体バンド」シリーズの流れを汲むディープな実験と発明であり、また「片平里菜の蓮っ葉な歌い手としての魅力を引き出す」、「Ken Yokoyamaに強力な日本語詞アンセムを歌わせる」といったシングル群も、いちいちチャレンジングで面白かった。そう言えば、とっておきのバスサックスがここぞとばかりに響き渡る“Paradise Has No Border feat. さかなクン”の、あのCMのインパクトも忘れることができない。

(“遠い空、宇宙の果て。”ミュージックビデオ)

(“Girl On Saxophone X” ミュージックビデオ)

アルバム『Paradise Has NO BORDER』には、“Samurai Dreamers <サビレルナ和ヨ> feat. TAKUMA(10-FEET)”や“遠い空、宇宙の果て。 feat. Ken Yokoyama”といった新たな歌モノも含まれているけれど、一方でサザンソウル風のドラマティックな幕開けを告げる“Skankin’Rollin’”、スカ/ブラジリアンミクスチャーの新局面“Believer”、オリエンタルなテクノポップ風ナンバー“天空橋”といった楽曲群がバラエティ豊かで素晴らしい。艶やかでエキセントリックな和の色彩がサウンドに映える“Girl On Saxophone X”のミュージックビデオも、極めて刺激的だ。

シングルのときにタイトルでニヤリとさせられた“めくったオレンジ feat. 尾崎世界観(クリープハイプ)”や、アップリフティングに生まれ変わってしまった“Routine Melodies Reprise”含め、「人々から、新しくカッコいい一面を引き出す」今のスカパラサウンドは、このニューアルバムで「もう一段階上の、新しくカッコいいスカパラ」として結実している。ここは単に「ジャンル/国境なき音の楽園」ではなく、「己の殻を打ち破る音の楽園」でもあるのかもしれない。(小池宏和)
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