今週の一枚 フジファブリック『STAND!!』

今週の一枚 フジファブリック『STAND!!』

《トキメキをもっとちょうだい 飽きるほどもっとちょうだい/まだまだ行けるさ 明日をもっと信じたいんだ》
(“SUPER!!”/作詞:山内総一郎)

《全身全霊全てを掴むよ/僕の手の中には生まれたての希望》
(“ポラリス”/作詞:金澤ダイスケ)

《ステレオからは慣れたミュージック 街並み眺め進むビートが/転がってんだよ ここで楽しまないと損だって言えるぜ》
(“プレリュード”/作詞:加藤慎一)

三者三様の躍動感に満ちた歌詞を思わず引用したくなるくらいに、フジファブリックの約2年ぶり9作目となる新作フルアルバム『STAND!!』には山内/金澤/加藤の情熱と音楽的冒険心が弾み回っていて、思わず嬉しくなる。

メジャーデビュー10周年のタイミングでリリースされた前作『LIFE』は、文字通り人生を見つめ直すようなコンセプチュアルな作品だったし、その後に立て続けに発売したミニアルバム2枚『BOYS』『GIRLS』も、男女それぞれの視点から恋愛を描ききったコンセプトアルバムだった。
が、初めて金澤が表題曲を担当したシングル『ポラリス』、さらにアルバム先行シングルとなった『SUPER!!』を経て発表される今作は、あらゆる感情のリミッターを解き放ったかのように自由で、色彩豊かだ。

『BOYS』にも収められていた“Green Bird”では百田留衣、『GIRLS』からの“Girl! Girl! Girl!”ではCHOKKAKUをプロデューサーに迎えているのに加え、フジファブリック作品を数多く手がけてきた高山徹(“炎の舞”“have a good time”“プレリュード”“COLORS”“ポラリス”)、初期以来10年ぶりにタッグを組んだ南石聡巳(“FREEDOM”“SUPER!!”“the light”)、さらに渡辺省二郎(“Green Bird”)、佐藤雅彦[Rec]&D.O.I.[Mix](“Girl! Girl! Girl!”)といった辣腕エンジニア陣を擁して制作された『STAND!!』。
楽曲・サウンド・プロダクション含め、今作は1曲ごとにまったく異なる色彩感と空気感を備えているし、ともすれば統一感を度外視した短編集/オムニバス的なテイストの作品になってもおかしくないところだ。

しかし、今作ではその多彩さこそが逆に、「誰でも歌い親しめるキャッチーさ」と「誰にも解き明かせない音楽のミステリー」の接点から極上のポップ感を生み出し続けるフジファブリックの核心を明確に浮かび上がらせ、アルバム全体に1本の強靭な軸を貫かせている。
見方を変えれば、今作はむしろ「四方八方に咲き乱れるフジファブリックの“今”の音楽的冒険心」そのものをフィーチャーしたコンセプトアルバム、と呼ぶ方が近いのかもしれない。

《ギラギラ燃えてるハートできっと誰もがSUPER!!/今を生きている!!》
(“SUPER!!”)

ポップの魔法そのもののような多幸感と高揚感がアルバムの随所からあふれ出してくる『STAND!!』。まさにフジファブリックというバンドの存在証明と言うべき快盤だ。(高橋智樹)
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