今週の一枚 Czecho No Republic

今週の一枚 Czecho No Republic

Czecho No Republic
『MANTLE』



世の中にあるいろんなモノの中でバンドやアーティストが好きなのはみんな誠実だから。
テレビで見るものも街で見かけるものも、大人も子供も同僚や友達でさえ、不誠実なものがかなりの多く混じっているが、
バンドやアーティストはみんな必ず誠実でピュアだ。

もちろん「何に対して」誠実か、というのはバンドやアーティストによって違う。
ファンに対して、音楽に対して、世の中の動きに対して、自分の信念に対して………
本当にいろいろだ。

チェコノーリパブリックは、
ポップの進化の物語に対して、ロックの伝統の継承に対して、その両方に対する誠実さのバランスがとてもいいバンドだ。
「今」と「永遠」に対する誠実さのバランスと言い換えてもいいかもしれない。

それはとても難しいことで、普通はただの良質で優等生なバンドになってしまう。
だから新世代のバンドの多くは「誠実さ」を向ける対象を限ってアンバランスの勢いで突っ走ろうとする。
ライブの勢いにすべてを賭けるバンド、音楽の先鋭性に向き合うバンド、売れることに誠実であろうとするバンド……
そんな風に誠実さを向ける対象を絞って一点突破で突き抜けようとする。

でも、チェコは音楽に対してバランス良く誠実でありながら、針の穴をするっと抜けるように突き抜けた場所に立てているバンドだ。
なぜそんなことができるのか、その答えはすべて彼らの楽曲にある。

メインストリームよりもサブカル寄り指向に見せつつ、
実は彼らの曲はポップ/ロックのスタンダードと言えるものばかりである。
10年後、20年後に聴いても風化しない力、海外のリスナーが聴いても共有される力を持っている。
武井優心のソングライターとしての力は新世代の中で頭ひとつ抜けている。
歌詞も、今の時代の中で自然にすっと入ってくる手触りを持ちながら、歌っていることは実はそれこそビートルズの時代からずっと変わらないポップの永遠のファンタジーとブルースである。
そうした曲と歌詞に対する誠実さが軸にあって、その上で今という時代に向かって思い切り翼を広げて自由に飛んでいるからチェコは突き抜けているのだ。
スピッツやフジファブリックが出てきた頃の存在感に似ている。

変な言い方だが、このアルバムがそんなに大ヒットしなくても全然安心(笑)、と僕はチェコに対して思っている。
山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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