今週の一枚 04 Limited Sazabys『eureka』

今週の一枚 04 Limited Sazabys『eureka』 - 『eureka』初回盤 9月14日発売『eureka』初回盤 9月14日発売

04 Limited Sazabys
『eureka』
2016年9月14日発売

8月28日の21:00過ぎ、04 Limited SazabysのGEN(Bass/Vocal)は、実に1 年と8ヶ月ぶりに公式ブログ上で新しい記事をアップした。

GENの公式ブログはこちら。
http://ameblo.jp/04genls/

彼も自分自身でツッコんでいるが、フォーリミのメジャー進出や、主催フェス「YON FES 2016」初開催時にも、彼の公式ブログは更新されていない。それがここにきて、あたかも最重要事項を伝えるかのような展開を迎えたのだ。ぜひ元記事を読んでその温度感を確かめてほしいのだが、かいつまんで言うと、バンドの上京と来年2月11日の日本武道館ワンマン開催についての報告である。

半ばはぐらかすようでありながらも雄弁な彼の文体は、このふたつの報告が確かに最重要事項であることを伝えている。そして彼は今回のブログ記事をこう結んでいるのだ。「その前に/9月14日に出るニューアルバム『eureka』を聴いてもらえれば/僕らの思いが分かると思います/全部歌詞にして歌ってるので」と。

《もっともっと行ってみる?/何処まで見てみる?/ここまで来たなら 信じなきゃなあ》。そんな“climb”の歌い出しに激しく胸を揺さぶられてから数ヶ月、04 Limited Sazabysのニューアルバムは間違いなく新しい物語を紡ぎ出すのだろうという気がしていた。これは旅立ちと別れの物語だ。『eureka』のオープニングを飾る“Horizon”では新鮮な視界がパアッと開けるような音楽体験があり、続く“Feel”では超エモーショナルな離別の情景を踏み越えて《ただ先へ進め》という結論に辿り着いてしまう。

『ROCKIN’ON JAPAN』10月号特別付録『フォーリミ夏期集中講座』に掲載されたGENの2万字インタビューでは、過去の記憶やしがらみとどのように決着をつけながら生きて来たのか、GENのそんな一貫した姿勢が浮かび上がってくる。それは、メロコアにルーツを持ちながらもメロコアの範疇には収まりきらないフォーリミ独自の音楽性をも説明しているのだが、これはロックのあり方として極めて美しい姿勢だ。

何かを否定するために新たな肯定性を導き出してやること、何かを破壊するために新たな何かを創造すること。フォーリミは、過去の記憶と折り合いをつけるために、新しい景色を見出さなければならないバンドなのである。《未だ見ぬ未知の道で/言葉が言霊になる日まで/意思を保ち続け/ひたむきに日々の質を向上/ありのまま間違えないように》(“Warp”)という知的かつ建設的な歌があれば、《でもたまには間違えたり/振り返りたい》(“Telepathy”)という人間くさい歌もある。このリアルな感情の揺れ幅をもったまま、フォーリミは新しい景色を見に行くのだろう。

後半の“Night on”~“mahoroba”~“discord”という豊かな感情の色彩はあまりにも素晴らしいが、やはり決定的なのは最終トラックのタイトルチューン“eureka”だろう。今日と出会うために別れを告げなければならないのは昨日であって、あなたではない。アルバム『eureka』を聴けばすぐにわかることだが、そのことをはっきりとさせるために、GENはあのブログ記事を書いたのだと思う。(小池宏和)
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