【10リスト】夜の本気ダンス、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】夜の本気ダンス、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
曲を耳にすると踊りたくて仕方なくなる夜の本気ダンス。彼らの音楽が巻き起こす「ダンス」とは一体何なのか? その点を様々な角度から示している代表曲を選んでみた。インディーズ時代から緻密なアレンジ力、表現力はかなり確立されているが、メジャーデビュー以降の多彩な進化ぶりも素晴らしい。深い音楽的教養で裏打ちしながらリスナーのダンス衝動をダイナミックに刺激するこのバンドの本質を、選んだ10曲からぜひ感じ取って欲しい。(田中大)


①戦争

夜ダンのライブの現場で絶大な効力を発揮する曲を挙げ始めるとキリがないが、そのうちのひとつとして“戦争”を選んでも異論を唱える人はほとんどいないと思う。インディーズ時代からライブで演奏されているこの曲は、桁外れの熱量、爆発的な興奮、圧倒的な楽しさを生むための要素が、徹底的に満載されている。演奏が中盤に差し掛かったところで、米田貴紀(Vo・G)が観客に「座れますか?」と呼びかけるのがこの曲の恒例だが、彼の「踊れ!」という言葉を合図に皆が一斉に立ち上がり、無我夢中で踊り始めた瞬間、ライブハウスは異世界と化す。周囲一帯が突然沸き立つようなあの感覚は、何度味わっても本当に気持ちいい。彼らの音楽に惹かれている人には、ぜひライブ会場でも体感してもらいたい曲だ。

②B!tch

夜ダンが放つ危険な香りに触れた瞬間、70年代末頃に活動していたジョイ・ディヴィジョンに通ずるものを感じる音楽ファンは、少なからずいるはずだ。また、80年代に入った辺りから本格的に開花するニューウェーブ的な柔軟な発想力、90年代のブリットポップのメロディアスさなどもイメージすると思う。そして、何よりも濃厚に感じ取るのは、00年代以降のロックンロールリバイバル的なエッセンスではないだろうか。“B!tch”のギターサウンドが醸し出している熱くて不穏な響きからは、あの頃の音楽への憧れと敬愛が伝わってくる。緻密に構築されたデジタルサウンドも非常に魅力的だが、人力のロックバンドにもかけがえのない輝きがある。長年着込んだレザージャケットの皺やヨレ具合が醸し出す美しさのようなものを体感させてくれる夜ダンは、「ロックバンド」という素朴な音楽表現スタイルの奥深さを、いつも再確認させてくれる存在だ。

③fuckin' so tired

紳士と淑女が手と手を取り合いながら優雅に円を描くのも、スポーツクラブでレオタードを着て爽やかにステップを踏むのも、ストリートでヒップホップミュージックをかけながら仲間と技を競い合うのも、どれもダンスという点では共通しているが、夜の本気ダンスのダンスはそれらとは別の領域に属している気がする。端的に言うならば、「どうも様子がおかしい……」という印象なのだ。「淫靡」、「いかがわしい」、「イッちゃってる」とでも言おうか? 胸の奥で沸々と煮えたぎっているフラストレーション、閉塞感、悶々とした想いを大爆発させてくれるような性質が、彼らの音楽には帯びている。酩酊感を誘う濃厚なグルーヴ、シャープで骨太なビート、巻き舌気味で頽廃的な香りを噴霧する歌声――夜ダンの必殺技が凝縮されている“fuckin' so tired”は、まさにその一例だ。耳にした瞬間、あなたの手足は自ずと動き始めて、自分でも驚くような野性的な声を上げたくなるだろう。

④WHERE?

夜ダンのダンスサウンドは、絶頂感をエンドレスで更新し続けるような展開を遂げるものが多い。曲の序盤から刺激を惜しみなく放射して、アクセルを踏み続けるかのように昂っていく様は、「山あり谷なし」、「クライマックスまみれ」といった印象だ。この独特さは、彼らの曲の多くがループ感を帯びていることから生まれているのだと思う。印象的なリズム、メロディ、リフを効果的に繰り返すのは、単なるリピートではない。フレーズが積み重ねられる毎に、サウンドが醸し出す熱は上昇し続けるからだ。そして、それを耳にしたリスナーの体内では、アドレナリンが分泌され続ける。“WHERE?”も、耳を傾けているうちに、クラクラしてくる曲だ。地面に立てたバットを額に当てて、その場でグルグルと回転した時のような恍惚を、ぜひ楽しんで欲しい。

⑤By My Side

2015年7月にリリースされたシングルの表題曲“By My Side”。夜ダンは、翌年の3月にメジャーデビューするので、本作はインディーズ時代の集大成的な曲ということになるのかもしれない。危険な香り、海外のロックへの敬愛、更新され続ける絶頂感……といった、彼らが育んできた持ち味が凝縮されていると同時に、「どうだ、俺たちの音楽、かっこいいだろう?」という余裕と貫禄のようなものが、サウンドから伝わってくる。この曲に関して、ぜひ触れておきたいのは、聴いていると湧き起こる艶めかしい感覚だ。踊れるロックというと、ピョンピョンと元気いっぱいに飛び跳ねる「直線的」なダンスを思い浮かべる人が多いと思うが、彼らの曲の多くが喚起するイメージは「曲線」。腰の辺りをクネらせて踊りたくなる音楽なのだ。“By My Side”は、そういう作風の代表例だと言えよう。

⑥Crazy Dancer

インディーズでの活動の中で着々と人気を高めて、全国各地のライブハウス、イベント、音楽フェスで熱い空間を作るようになった夜ダンは、2016年3月9日、アルバム『DANCEABLE』でメジャーデビュー。この作品のリード曲となった“Crazy Dancer”は、より広い世界へと飛び出した彼らの名刺代わりとしてこの上ない。とにかく、「めちゃくちゃ踊れる!」ということに尽きる。刻まれるシャープなビートに誘われてステップを踏み始める足、酩酊感を誘うギターリフによってクラクラし始める三半規管、呪文のように迫りくる妖しいメロディによって着々と失われていく理性……この曲を聴いて、じっと大人しくしていられる人類は、おそらく地球上に存在しないだろう。

⑦Feel so good

夜ダンは観客を徹底的に踊らせるが、本人たちが率先して踊るバンドでもある。叩き出す音、握りしめたスティックの動き、豊かな表情で「踊りたい!」という欲求を最大限に爆発させる鈴鹿秋斗(Dr・Cho)。激しくステップを踏んだり、身体を揺らしながら演奏して、観客のダンス衝動を加速させるマイケル(B・Cho)、西田一紀(G)。そして、誰よりもダンスの申し子と化すのが、米田貴紀だ。彼が全力で歌い踊る様は、鳴り響いている音に負けないくらいの躍動感を放っている。トレードマークとなっているストライプのシャツを揺らしながら踊っている彼の姿は、一種の呪文と言ってもいいのかもしれない。細身の彼が踊る動きの艶めかしいクネクネ、揺れるストライプが視覚に与えるクラクラが一体となった瞬間、フロアにいる観客のダンスは一層の熱を帯びる。ダンサブルさに色香も存分に添加されている“Feel so good”は、このような刺激を徹底的に生み出すことができる曲だ。

⑧SHINY

高橋留美子原作のアニメ『境界のRINNE』OPテーマ“SHINY”。サビに差し掛かった瞬間に爽やかに広がるメロディが、シンガロングを自ずと誘う。『境界のRINNE』が放送されていた土曜日の夕方、テレビから流れてくるこの曲を聴きながら無邪気に歌っていた子供たちが、たくさんいたのではないだろうか。しかし、この曲は「親しみやすい」というような印象だけには収まり切らない奥深さがある。展開やメロディは比較的シンプルに仕上げられているものの、リズム隊が醸し出しているムードは、子供には少し早いくらいの艶めかしいのだ。ギターも、フレーズの明るさと対照的に、音色はかなり荒っぽい。夜ダンがもともと持っていたキャッチーな一面を絶妙に開花させたと同時に、サウンドアレンジの切れ味の良さを示した曲として、“SHINY”は位置付けることができるだろう。

⑨TAKE MY HAND

2017年4月にリリースしたシングルのタイトル曲“SHINY”によってキャッチーな一面を示した夜ダン。その後に続いたシングルで、さらにキャッチーになるかと思いきや……危険な刺激を炸裂させたのが、ドラマ『セシルのもくろみ』主題歌“TAKE MY HAND”であった。ギターサウンドの雄叫びっぷり、手足をブンブンと振り回したくなる熱いビート、理性を完全に粉砕するスピード感に満ちているこの曲は、とにかくスリリング極まりない。複数のサウンドが絶妙な間合いで融合した時に生まれる劇的なグルーヴも、この曲は存分に噛み締めさせてくれる。「グルーヴ」とは譜面で表せるものではなく、人によって言っていることが微妙に異なるという、なかなか厄介な概念である性質上、説明が非常に難しい。「グルーヴってなんなのさ?」という疑問を抱いている人は、決して少なくないだろう。その疑問を解消できるヒントが、夜ダンの音楽にはたくさん散りばめられている。“TAKE MY HAND”が漂わせている「只ならぬ空気感」、「なんかワクワクして仕方がないフィーリング」は、「グルーヴ」というもののイメージを掴む上での良い材料となるはずだ。

⑩Sweet Revolution

2019年6月にリリースされたアルバム『Fetish』から先行配信された曲のひとつ“Sweet Revolution”。ガレージバンド的なササクレ立ち方をしているサウンドが、サビに入ると一気に爽やかな色合いを帯びるのが、とても心地好い。この曲を聴くと改めて実感させられるのは、彼らの音楽を彩っているギターサウンドの豊かな色合いだ。エレキギターという楽器は1950年代に普及して以来、多少目新しい要素が加わった製品が開発されることは時折あるものの、基本的な部分は何も変わっていない。少々乱暴な表現をするならば、「数十年間にわたって進歩がない楽器」とも言えるだろう。しかし、機材のセッティング、組み合わせ、プレイの繊細なニュアンス、アンサンブルの中での立ち位置のバランスによって、無数のフィーリングを生む喜びを、プレイヤーに与え続けている。“Sweet Revolution”に関しても、ギターの音色によって醸し出された空間の広がり、哀愁、野趣が、実にカラフルだ。そういえば、夜ダンのインディーズ時代の曲に“ロシアのビッグマフ”というのがある。ビッグマフとは歪み系のエフェクターの名称であり、そんなタイトルを曲に付けるところからも、このバンドのギターサウンドへのこだわりを感じ取ることができる。海外のロックへの敬愛、独自のダンスサウンドの追求、グルーヴの探求……夜ダンの音楽を語る上での大切なポイントはいろいろあるが、ギターミュージックとしての多彩さも、注目しておきたい部分だ。
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