【10リスト】星野源、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】星野源、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
前作『YELLOW DANCER』から約3年。待望の新作フルアルバム『POP VIRUS』がついにリリースされた。その間にも自らの歴史を鮮やかに更新するような見事なシングルのリリースが続き、それがこの最新作に集約されている。今回は、そのリリースを機に、デビュー当時から現在に至るまでの、星野源のキャリアの中で「聴いておくべき」、「まずはこれを」と思う10曲をリストアップ。各楽曲を紹介しながら、その変遷を少し振り返ってみたい。もちろん10曲に絞るのは困難だったし、できればすべての楽曲を取り上げたいくらいだけれど、星野源が持つ多様な魅力を伝える10曲としては、なかなか濃い選択になっていると思う。最新作とともにお楽しみください。(杉浦美恵)


① ばらばら


1stアルバム『ばかのうた』、その1曲目に収録された楽曲で、「ひとりエッジ」や「ツービート」など弾き語りライブでも定番の人気曲。《世界は ひとつじゃない/ああ そのまま ばらばらのまま》という歌い出しで始まる、どこか諦念を感じさせるような歌詞だが、「ばらばら」だからこそ自分にないものを求め、「ばらばら」だからこそ手を取り合うことができると、《ひとつになれない》ことを逆説的に肯定する内容にハッとさせられる。そもそもは子どもの頃に「世界はひとつ」という言葉に違和感を感じたことからこの楽曲は生まれたとも言われているが、その独自の感性、視点の確かさは、デビュー当初からすでに確立されていたと言える。


② くせのうた


同じく『ばかのうた』に収録され、1stシングル『くだらないの中に』には宅録バージョンがカップリングとして収録されている。《寂しいと叫ぶには/僕はあまりにくだらない》という歌詞が強烈に寂しさを感じさせるが、やはりこの頃の星野源の楽曲は、深夜にひとりで音楽に向き合って生まれてきたものという印象が強い。だからこそ現在も自身のルーツとして、星野は初期のこの楽曲をとても大切にしているのではないかと思う。孤独の中で好きな人を思う時間があり、そしてここでもまた《知りたいと思うには/全部違うと知ることだ》と、他者とひとつになれないからこそ生まれる恋を歌い、だからこそ人それぞれにある「癖」を知りたいと思う、その素晴らしい歌詞が胸に響く。


③ くだらないの中に


《髪の毛の匂いを嗅ぎあって くさいなあってふざけあったり》、《首筋の匂いがパンのよう すごいなあって讃えあったり》、こんな可笑しな描写で純粋な愛を綴る歌を私は他に知らない。《くだらないの中に愛が 人は笑うように生きる》と続くと、日常の景色がとても愛おしいもののように思えて、わけもなく涙があふれそうになる。アルバムデビューから約8ヶ月後にリリースされた1stシングルの表題曲だが、この楽曲を初期のベストに挙げる人も多い。ライブの弾き語りコーナーで披露されることもあり、今なお色褪せぬ普遍の名曲。《心が割れる音聴きあって ばかだなあって泣かせあったり》という歌詞は、この歌そのもののことのようだ。


④ 夢の外へ


2ndアルバム『エピソード』のヒットにより、シンガーソングライターとしての評価が格段に高まり、その後のシングル『フィルム』のリリース後、約5ヶ月という短いスパンで出来上がった3rdシングル。ストリングスの音が華やかさの中に不思議な浮遊感を感じさせる楽曲で、J-POPのフィールドでどれだけオリジナルなことをして受け入れられるか、そんな実験を楽しんでいるような雰囲気もある。妄想の世界と現実とを行き来しながら、どちらも受け入れて生きるという星野源の弱さと強さの両方が映し出された、現在と地続きにある楽曲でもあると思う。


⑤ 化物


マリンバの音が炸裂するイントロの華やかさやサウンドの軽快さとは裏腹に、自身の暗部にとことんまで向き合うような重い歌詞が心を打つ。《奈落》や《せり上げ》と言った歌詞表現からも察することができるように、実はこの楽曲は、星野が以前親交のあった歌舞伎俳優、中村勘三郎のことを思って書いたものだ。華やかな舞台の裏にある勘三郎の孤独と自らの孤独とを重ね合わせて生まれたというエピソードもある。楽曲のテンポ感がその孤独をカモフラージュするかのような、ひとつの楽曲に二面性を映し出す表現方法は、後々の“アイデア”にも通ずるところがあると思う。3rdアルバム『Stranger』の冒頭を飾る楽曲。


⑥ 桜の森


“Crazy Crazy”との両A面でリリースされた7thシングル。自身がヘヴィリスナーであったラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』へ出演した際にこの楽曲についての解説をしており、いわく「官能的な日本文学をディスコクラシック、ソウルミュージックと掛け合わせた」のだという。病気で休養をしていた時期に久しぶりに耳にしたプリンスの“I Wanna Be Your Lover”に触発されてできた曲だとも語っていた。プリンスこそエロスの体現者。そこに生命力の源を見たのかもしれない。自身のルーツでもあるブラックミュージックのグルーヴに日本の景色を映し出す、その「イエローミュージック」的な解釈がすでに顕著で、やがてそれが『YELLOW DANCER』へと結実していく。


⑦ SUN


星野源が初の連ドラ主題歌として書き下ろした楽曲であり、物語に寄り添ったものであると同時に、自身のモードをかなり色濃く反映させた楽曲であると感じる。リリース当時の『ROCKIN’ON JAPAN』のインタビューでは、「日常の厳しさとか、それを受け入れて進んでいこうっていうことって、もう初期装備なんじゃないかと。あえて言わなくてもみんな頑張って生きてるぞと。自分が倒れたこともあって、もう確信に変わったんですよね、『やっぱり全部そうだったわ』と」と語っていて、だからこのフラットなテンションこそがリアルに感じられ、過剰な盛り上げやドラマチックな展開がなくても感動的な日常がそこにあることを教えてくれる。8thシングル。


⑧ 恋


星野源が名実ともに真に「国民的シンガーソングライター」と称されるようになったのは、このシングルがきっかけと言っていいだろう。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』に出演&主題歌提供し、「恋ダンス」ともども老若男女を巻き込む社会現象とも呼ぶべきムーブメントを巻き起こした。キャッチーさの中にふんだんに違和感を盛り込んだこの楽曲が、J-POPのシーンでも完璧に受け入れられたということが痛快でもあったし、その前年にリリースしている大傑作アルバム『YELLOW DANCER』の世界観を色濃く継承するサウンドはとにかく画期的だった。ポップの歴史を塗り替える威力を持つ9thシングル。


⑨ アイデア


NHK連続テレビ小説『半分、青い。』のために書き下ろされた楽曲。配信のみのリリースであったが、2コーラス目で突如、自己の孤独に向き合うかのようなビートミュージックへと変貌する展開には大きな驚きの声が上がった。自身の歴史をフラッシュバックさせながら再び外へと開いていくようなサウンドデザインは、予想以上の感動を生み、それこそ「アイデア」満載のMVは、楽曲の魅力をさらに強烈に印象づけた。ドラマ主題歌としての役割と自身の深い思考や個人的なサウンド嗜好の表出という、両極を見事に両立させた今作は、タイアップというものの在り方を刷新するようなエポックメイキングな「事件」であったと言っていい。


⑩ Pop Virus


“アイデア”を経て、リリースされたばかりの5thアルバム『POP VIRUS』。その表題曲にして1曲目に収録されている楽曲。常にリスナーを良い意味で裏切り続ける星野源ならではの「時代の音」であり「独自の音」である。“恋”から“アイデア”にかけてたどりついた境地が“Pop Virus”という「イエローミュージック」の最新進化形態とでも呼びたくなる楽曲へと結実した。《口から音が出る病気》、そのウイルスがパンデミックを起こすことはもはや必然であり、ビートやシンセサウンドに世界標準の「今」を感じさせながら、あくまでも星野源のポップなグルーヴに貫かれている。
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