All photo by AYATO.東名阪のZeppを巡り、4月21日にTOKYO DOME CITY HALLでファイナル公演を迎えた「THE REAL AKIBA BOYZ ONEMAN LIVE TOUR 2024 『Over The
Future』」。昨年の4月1日にもワンマンライブが行われたこの会場には、
REAL AKIBA BOYZ（以下、RAB）の様々な思い出が刻まれている。2008年に「ニコニコ大会議」に出演した際、いい反応を得られず、悔しさを噛み締めたのもTOKYO DOME CITY HALLだ。前回のライブから約1年が経ち、すっかりホームグラウンドとなった空間で繰り広げられた彼らのダンスパフォーマンスは、強く胸を打つものがあった。その模様をレポートする。
オープニング映像がスクリーンで流れ始めると、客席の全エリアから湧き起こった力強い手拍子。バックバンドを務めるREAL AKIBA BANDを出迎えた歓声も熱い。そして客席に背中を向けて横一列で並んだRABの9人・涼宮あつき、けいたん、DRAGON、ムラトミ、マロン、ネス、ゾマやかじゃない!、とぅーし、龍が一斉に振り返り、1曲目“アイドル”がスタート。後方でバンドメンバーたちが演奏と歌声を響かせる中、ステージ前方エリアを目一杯に使いながら繰り広げられたダンスは、序盤から切れ味が抜群だった。ヘッドスピンなどの大技も連発され、保護者（RABファンの呼称）たちは早くも限界突破の興奮状態。アキバカルチャー愛好家に対するパブリックイメージを体現した「チェック柄のシャツのパンツイン」がRABの衣装の基本スタイルだが、炸裂させるブレイクダンスは紛れもなく超一級品。国内外の大会で高い評価を受けている9人がアニメソングへの愛情をダンスで表現する様は、本当に美しかった。「始まったぞー！ 最後まで楽しんでいってね。クラップしようぜ！」──あつきが保護者に呼びかけ、2曲目“君じゃなきゃダメみたい”に突入すると、ますます熱気に包まれたTOKYO DOME CITY HALL。客席で掲げられた無数のペンライトの9色の光が、とてもきれいに輝いていた。
“ようこそジャパリパークへ”も披露されたあとに迎えた小休止で、メンバー各々が自己紹介。そしてユーモラスな動きをたくさん盛り込んだ“ロマンス”の直後、シークレットゲストが登場して保護者を大喜びさせた。踊るRABの9人に加わったのは、なんと
Travis Japanの川島如恵留！ “ロキ”のスタート早々、ものすごい高さのバク宙をした彼は、RABのメンバーに完全に融け込むチェックのシャツの裾を優雅に揺らしながらパフォーマンスを繰り広げた。手にしたサイリウムを点灯してヲタ芸を全力で披露する姿も実に楽しそう。「もう1曲やっていいですか？ Travis Japanのデビュー曲です！」と彼が言い、さらに披露された“JUST DANCE!”は、10人編成の熱いダンスの根底で温かなリスペクトが交わされているのが伝わってきた。
2曲が披露され、豪華なコラボレーションは終了かと思いきや、ユニークな延長戦が待っていた。けいたんとDRAGONが突然始めた寸劇を、すぐ近くで黙って見守っていた如恵留。戦争によって荒廃した近未来の世界を舞台としたふたりのやり取りを眺めながら「どう絡んだらいいのだろう？」と、困惑しながら浮かべていた表情が微笑ましかった。2022年11月11日にシンガポールで開催された「YouTubeFunFest Live In Singapore」でRABとTravis Japanが共演した時の思い出も語り合ったけいたん、DRAGON、如恵留。REAL AKIBA BANDが繰り出すビートを彼らが乗りこなし、ラップ調でオリジナルグッズを紹介するコーナーも素敵なコラボレーションとなっていた。
RABのパフォーマンスの編成はオリジナルメンバー5人の「RAB ROOTS」、ネス、とぅーし、ゾマやかじゃない!による「RAB ESPICE」も含め、曲に応じて様々に変化する。ライブの中盤からは、多彩なコンビネーションが発揮された。“粛聖!! ロリ神レクイエム☆”以降、遊び心に満ちたダンスが次々届けられたが、保護者たちを大喜びさせるキャッチーな要素となったのはコスプレ。
ゆこぴのMVに登場する女の子を彷彿とさせる赤いランドセルを背負った女の子のコスプレも飛び出した“強風オールバック”“寝起きヤシの木”は、曲の世界を絶妙に表現していた。そして“ジャンボリミッキー!”では、プロバレエダンサーのヤマカイ&ネレアが途中から合流。RABのブレイクダンスとクラシックバレエが融合した華やかなパフォーマンスだった。
ヤマカイ&ネレアとの共演では、“おジャ魔女カーニバル!!”と“ちゅ、多様性。”も披露。キュートなおジャ魔女に扮したRABとヤマカイに囲まれたネレアの可憐なプリマぶりがなかなかシュールだったが、「男性は魔女っ娘になってはいけない」という偏狭な考えを捨て去れば、視界に飛び込んでくるのは、ただひたすらにかっこいいダンス。鍛え上げられた人間の動きは、猛烈に美しいということを再認識させられた。
RABの9人が一旦ステージ裏に戻った幕間では、REAL AKIBA BANDによる“ビッグブリッヂの死闘”が鳴り響いた。ホーンセクションも含む大所帯のこのバンドの演奏と歌は、RABのライブに欠かせない存在であり、保護者たちからも深く愛されている。メンバー各々のソロプレイが繰り出される度に歓声が高まって生まれた熱気は、楽屋で衣装チェンジをしていたRABの9人にも伝わっていたに違いない。
“U”“Get Wild”“唱”“死んだ！”が一気に披露されたブロックでも、メンバー編成は曲毎に変化。“なまらめんこいギャル”では、作詞・作曲者であるオーイシマサヨシのお面を着用したパフォーマンスが、摩訶不思議な空間を作り上げた。爽やかな笑顔を浮かべた5人のオーイシマサヨシが俊敏に踊る様はシュール極まりない。しかし……文句なしにかっこいいのだから困ってしまう。自由奔放な遊び心をドラマチックなダンスに昇華できるRABの高いスキルを再確認させられた。
ムラトミとマロンによるMCタイムを経て、ステージに登場したALIの3人──LEO（Vo）、CÉSAR（G）、LUTHFI（B）。「3つの言葉、LOVE, MUSIC & DANCEを神様の名前だと思って信じてる。REAL AKIBA BOYZは、観れば観るほどLOVE, MUSIC & DANCE。ここでみんなと俺たちALIで挟み撃ちにして最高の時間を作りたいと思うんですけど、手伝ってくれますか？」とLEOが保護者たちに呼びかけて雪崩れ込んだ“LOST IN PARADISE”は、極上のグルーヴとダンスの融合にワクワクさせられた。“Wild Side”でもALIの生命力に溢れたサウンドを全身に浴びながら、難易度の高い大技をたくさん繰り出していたRABの9人。両者のコラボレーションの2曲が幕切れた直後、「美しい妖精みたいなのが音符の代わりに見えて、僕たちも踊りに合わせて気持ちを変える感じだった」と共演の感慨を語ったLEO。RABのメンバーたちも、興奮冷めやらぬ様子だった。
スペシャルゲストが全員加わった記念撮影のあと、RABのメンバーを代表して想いを語ったゾマやかじゃない!。「Zeppの3公演を経て、本日の公演で確信しました。俺らの歩いてきた道には、信じてついてきてくれる仲間がこんなにいるんです。本当にありがとう！ ネスも大阪公演で言ってくれました。みんながいるから最高を塗り替えられる。絶対に最高を超えられると。俺らにはまだ更新していない場所がある。8人編成だった時、更新しきれなかった場所があるんだよ。2年前の夏、龍がまだ入っていなかった。今の俺たち9人とみんなが一緒だったら最高を超えられる。10月4日、日比谷野外大音楽堂！」──そして大型スクリーンでRABの17年の軌跡を辿る映像が流れ、10月4日の公演の会場が示されたのだが、浮かび上がったのは「日本武道館」という文字。「日比谷野外大音楽堂」でのライブを告知するつもりだった9人はうまく呑み込めず、暫くの間、呆然……。そしてふと我に返ると、大粒の涙を流しながらハグを交わし合った。長年に亘ってRABが掲げてきたふたつの目標は、「RABのアニメ化」と「日本武道館公演」。10月4日に開催される「リアルアキバボーイズ日本武道館-レペゼン秋葉原-」で、ついに悲願のひとつが果たされる。心ない言葉を浴びることもあった彼らが夢を掴み取った姿は、本当に感動的であった。
特大級のサプライズの直後に披露された“SURVIVE”は、保護者の涙腺も緩ませていた。この曲の歌詞は、RABのメンバー各々のことを描いている。個性豊かな９人のことを一際愛おしく感じさせてくれた。「もっと向こうに行きたい。さらなる高みに僕らは走っていきたい。そう思って新曲を作りました。聴いて、目に焼き付けてください」と龍が言ってから披露された“REALIZE”。そして怒涛の勢いで連発された“シュガーソングとビターステップ”“脳漿炸裂ガール”“VERSUS”“NEW ERA”……客席で飛び跳ねながら盛り上がった保護者が、ステージ上で踊る9人を心から祝福していた。
最後の曲を始める前の小休止で届けられたもうひとつの嬉しい告知。「REAL AKIBA BOYZ loves 田口華有＆AiRyA from REAL AKIBA BAND」名義の新曲“フライド☆プライド”が、7月から放送される予定のアニメ『エルフさんは痩せられない。』のOP主題歌となる旨が発表された。先日、マロン作の『RAB(リアルアキバボーイズ)の日常描いてみた』がAnime Japanの「アニメ化してほしいマンガランキング2024」の第3位となったことも含めて、「RABのアニメ化」は着々と実現に近づいているのかもしれない。そしてライブのラストは、“Over The Future”が飾った。「俺たちの夢は終わらねえぞ！」──あつきが叫び、全力のダンスがステージ上で活き活きと躍動した。とぅーしは、REAL AKIBA BANDのシンガー、ラッパーたちと一緒に後方で熱唱。今回のツアーと同タイトルのこの曲は、未来に向かって進んでいるRABの姿を感じさせてくれた。
文字通り完全燃焼で迎えたエンディング。ハグを交わし合ったメンバーたちを見ると、胸が熱くならずにはいられなかった。「武道館ですか？ 噓でしょ⁉ 武道館かあー。全員が最高のパフォーマンスができるくらいのレベルまで持っていくので、全員来てください！ よろしくお願いします！」──とぅーしの言葉を受け止めた保護者は、惜しみない拍手と歓声をステージに向かって届けた。そして何度も手を振りながらステージをあとにした9人。「アニメソングでブレイクダンスを踊る」という表現スタイルを貫き続けたRABが大輪の花を咲かせる時期が迫っていると確信させられたライブであった。（田中大）
●セットリストTHE REAL AKIBA BOYZ ONEMAN LIVE TOUR 2024『Over The Future』
2024.4.21 東京・TOKYO DOME CITY HALL
01. アイドル
02. 君じゃなきゃダメみたい
03. ようこそジャパリパークへ
04. ロマンス
05. ロキ
06. JUST DANCE!
07. 粛聖!! ロリ神レクイエム☆
08. 強風オールバック
09. 寝起きヤシの木
10. ジャンボリミッキー！
11. おジャ魔女カーニバル!!
12. ちゅ、多様性。
13. ビッグブリッヂの死闘
14. U
15. Get Wild
16. 唱
17. 死んだ！
18. なまらめんこいギャル
19. LOST IN PARADISE
20. Wild Side
21. SURVIVE
22. REALIZE
23. シュガーソングとビターステップ
24. 脳漿炸裂ガール
25. VERSUS
26. NEW ERA
27. Over The Future
REAL AKIBA BOYZ オフィシャルサイト
提供：株式会社アブストリームクリエイション
企画・制作：ROCKIN'ON JAPAN編集部
