【10リスト】キュウソネコカミ、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】キュウソネコカミ、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
今の時代ならではのワードセンスをダンス&パンクロックに乗せ、常に限界まで熱量を上げたライブを繰り広げる、今や日本のロックシーンに不可欠な存在と言えるバンド、キュウソネコカミ。結成から、自虐やひねくれた視点をシニカルに綴り続けていたインディーズ時代と、「生きづらい現代社会をなんとか生き抜いていこう」というメッセージを綴るようになったメジャー期となる現在までの10年間で生まれた作品のうち、本稿では10曲をピックアップし、バンドが発信する想いの変遷や根幹を探っていく。(沖さやこ)


①DQNなりたい、40代で死にたい

かの有名な「ヤンキーこわい」で知られるライブアンセムは、2012年発売の2ndEP『キュウソネコカミ(赤盤)』および2012年3月にリリースされた初の全国流通盤『10代で出したかった』に収録。この曲が生まれた頃、すなわち初期のキュウソネコカミは関西学院大学という名門大学に通うも就職活動がうまくいかず、プライベートはプライベートで《地元の可愛い女は大体地元のDQNにやられてる》という悲しい顛末。そんな八方塞がりとも言うべき状況への怒りと皮肉の爆発力を、音楽と笑いに落とし込むというスタイルの代表格がこの曲である。《ドン○ホーテは貴様らのたまり場ではないぞ!》とヤンキーに噛みつきつつも、自分が持っていないものをすべて持っている事実への理解と嫉妬が見えるところは、悲哀的でもあり微笑ましい。サウンド面ではthe telephonesの影響も色濃く、巧みに入れ込まれたギターリフも光る。

②サブカル女子

『10代で出したかった』から約9ヶ月というインターバルでリリースされた2ndフルアルバム『大事なお知らせ』の収録曲。歌詞には同年当時のサブカル女子の特色を偏見混じりで羅列。なかでも《黒髪ボブヘアダテ眼鏡》の単刀直入さと語感の良さは一級品だ。時代の移り変わりとともにサブカルシーンも変わりゆくが、この曲がサブカル女子のひとつの定義と化したことは確かだろう。サブカル女子が悪であるという描写は一切なく、《近寄りがたいねでも好きさ》や《サブかる女子に賛辞》などの文言を入れることで悪意がないことを示すのは、キュウソの知能犯かつ窮鼠っぷり、なによりサブカル女子への慈愛では。《苦いブラック無理して飲む》の視点には父性に近いものを感じる。Cメロから間奏にかけてのセンチメンタルなシンセのコードワークもまた一興。

③ファントムヴァイブレーション

“DQNなりたい、40代で死にたい”と“サブカル女子”で一気に注目を集め、追い風吹き荒れる最中でリリースされたミニアルバム『ウィーアーインディーズバンド!!』に収録。スマホでお馴染みの着信音をシンセリフに用いて、現代人の携帯依存を歌いあげている。ポップなサウンドとキャッチーなメロディに、異質な行動を淡々と羅列していくところが実にシニカル。特にライブでもコール&レスポンスが起きる《スマホはもはや俺の臓器》というラインは、ど真ん中で的を射たパワーワードだ。面白くて取っ付きやすいなかに、そこはかとなく危機感と恐怖が宿るというシュールさは、バンドの知的なセンスあってこそと言える。楽曲の終盤の《僕らはいつも寂しくて 人との繋がりばかり求めて/結局誰ともリアルな繋がりは無くて それでも君は俺を呼ぶ》という心情吐露と現実がちくりと胸を刺す。

④ビビった

2014年6月にリリースされたメジャーデビュー作『チェンジ ザ ワールド』の1曲目。メジャーシーンで活動していくうえでの気合いや不安をすべて盛り込んで、混沌としたリアルな気持ちをキュウソ流のユーモアに昇華している。2010年代の音楽シーンの非情なサイクルに中指を立てつつも、自分もそこに取り込まれてしまうかもしれないという生々しい不安を吐き捨てるように歌うヤマサキセイヤ(Vo・G)のボーカルは、ロックバンドのフロントマンらしい弱者の反骨精神が散見。《消費されて飽きられる前に》、《売れたいマジで》、《なめんじゃねぇ!》という直球の本音も逞しい。キュウソネコカミのロック精神を明快に示した楽曲だ。《オリコンチャートは今日もたくさんの愛で溢れて壊れている》という哀愁のある風刺も秀逸。

⑤MEGA SHAKE IT !

2015年7月にリリースされた1stシングル曲であり、眠気覚まし飲料「メガシャキ」CM曲。扇情性の高いシンセや四つ打ちビートといった、“ビビった”や“良いDJ”などに通ずるライブシーンで着火性の高いサウンドメイクが施されており、観客がシンガロングや合いの手を入れられる箇所も多い。歌詞も《バカになる事も必要さ バリバリ真面目にやってれば/溜まるストレス今ここで晴らそう》など、仕事や勉強で抑圧される人生からのひと時の解放を音楽でもって呼びかける。「ハウスウェルネスフーズ」製品のタイアップソングゆえ、曲中にハウスミュージックのセクションを入れるところはキュウソらしい洒落っ気だ。

⑥ハッピーポンコツ

“MEGA SHAKE IT !”とともに両A面シングルとしてリリース。ひとつ前の作品となるミニアルバム『ハッピーポンコツランド』のタイトルをテーマに、約半年の時差で制作された愛すべき「ポンコツピーポー」へ贈る応援ソングだ。どうしても完璧を求めてしまう真面目な人間たちに具体例を出しながら「ポンコツでもいいんじゃない?」と呼びかける。《大体モグモグしてればハッピー》という一節も、《心に空いた穴/埋めようよ/空心菜食って》と空心菜の美味しさについて歌い上げるインディーズ時代の楽曲“空心菜”に通ずるマインドを感じさせ、圧倒的勝者ではない立場からの視点の楽曲を書き続けてきたキュウソネコカミの、ある種の到達点とも言えるアンセムに仕上がった。《失敗しても大丈夫》のあとに《愛嬌と礼儀があれば》と導くところにも、細やかさや優しさが見える。

⑦わかってんだよ

2016年10月にリリースされた3rdシングル曲。10代の頃の葛藤を感じさせる歌詞と、パンキッシュな衝動性とセンチメンタルなメロディとコード感で構築されたサウンドが特徴。《ダサい生き方をしている奴ら見下してた》など醜い本音をさらけ出す一方、自身の至らない点も次々と炙り出していく。ただ生きているだけだった時期の自分を俯瞰で見られるようになったからこそ、当時の自分を突き動かすような楽曲が産まれたのだろう。自分の卑屈だった部分を隠さないからこそ説得力も生まれ、リアルタイムの卑屈さではないからこそ客観性も生まれる。ゆえに行動に移したくても腰が重くて移せない若者の心に響く楽曲へと発展を遂げたのではないだろうか。《めんどくさい事やらなきゃダメだよ》は耳が痛いほどに真理だ。

⑧NO MORE 劣化実写化

同曲がリリースされた2017年8月は人気漫画の実写化が盛んな時期で、またタイムリーにぶっ込んできた曲だなと驚いた。これまでの歌詞と比較すると、茶化したりご意見番的な要素も強く、実写化が発表されたときのTwitterのトレンドツイートを眺めているよう。世間の声を集約させた側面が強いため、共感度も高い。だがこの曲は《あぁ~意外と観てみたら おもろかった。/あぁ~自分の目で見て決めろ 劣化実写化》という一節で締めくくられる。これが最後に来ることで、安易に実写化する映像界への批判というよりは、作品を観ずに判断する世間に対する風刺という捉え方ができる、なかなか奥深い一曲でもある。アグレッシブなダンスビートも軽快に響き、曲中にミュージカル風のセクションを入れるなどの工夫も光る。

⑨The band

2018年4月にリリースされた5thシングル曲。タイトルからもわかるように、サウンドと歌詞ともにキュウソネコカミというバンドの美学や葛藤が表れた楽曲である。どう進むべきか悩みながらも、世間の声などにもまれながらも、彼らが求めることはただ《ロックバンドでありたいだけ》。活動の進め方はバンドそれぞれで、なにが正しいというわけでもない。パンクをベースにしたサウンドとともにそんな生き様を見せられると、リスナーとしても付随する余計な情報は取っ払って、なによりもまっすぐに音楽を受け止めたいという気持ちが鼓舞される。《今この瞬間も感じてる 音楽を通じ救い合えてる》というラインは、キュウソなりのリスナーへの感謝の気持ちの表明だろう。

⑩推しのいる生活

メジャー3rdフルアルバム『ギリ平成』の1曲目でありリードトラック。もともと「推し」という言葉はアイドルファンの間で使用されていたが、その言葉の利便性から2010年代に入ってからあっという間に一般的に使用されるようになった。まさに「ギリ平成」の時代の象徴のひとつとなる概念だ。推しのいる生活の素晴らしさを唱え続ける歌詞には、《今日もテレビからラジオから 雑誌からいろんなステージから/元気な姿を見せてくれ それだけで心満たされる》、《良い距離感で歩んでいかなくちゃ》、《語彙力飛んでも理性飛ばすな》など、かなり節度を守って推している様子が綴られる。ひたすら推しの幸せを願う奥ゆかしさや健気さこそ、恋でも愛でもない特別な尊い感情だ。ふだん推される側の彼らが、「推しは増えても変えても飽きてもいい」と綴っているところにも、ファンとヘルシーな関係を求めていることが窺える。
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