あのボカロPの体温が伝えるもの

ササノマリイ『シノニムとヒポクリト』
2014年10月15日発売
MINI ALBUM
ササノマリイ シノニムとヒポクリト
動画サイトシーンで高い人気を確立しているボカロP「ねこぼーろ」が、自身の声で歌う「ササノマリイ」として活動を始めている。本作はその名義による初の全国流通盤。既に様々な形でカヴァーされている“戯言スピーカー”も、本人の歌声で届けられると改めて魅力を光らせる。穏やかなメロディが広がるこの曲だが、歌われている心情は果てしなく切ない。聴き手に容赦なく突きつけられるのは、傷ついた心を隠して浮かべる笑顔の絶望的なまでの冷たさだ。「淡々としている」と言っても良いくらいに感情を抑制したササノマリイの歌が、矛盾した表現になってしまうのだが……猛烈に情感に溢れている。自分の存在意義の無さをハッキリと確信しつつも、温かい眼差しを向けてくれる人の姿に触れると心が揺らぐ様を歌う“自傷無色”。心を閉ざして生きる息苦しさ、自身に対してふと放ってしまう前向きな言葉の虚しいトーンが滲む“シノニムとヒポクリト”など、孤独と真っ直ぐ向き合った曲の数々が美しい。ねこぼーろのファンは勿論、心が震える歌を求めているあらゆる人にぜひ聴いて欲しい。(田中大)
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