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現在放送中のTVドラマ『Destiny』の主題歌“人間として”を表題曲に掲げた、椎名林檎デビュー25周年第2弾シングル。グラマラスなホーン&ストリングスが冴え渡る極彩色ビッグバンドワルツ“人間として”が、「正義」を前に苦悩し葛藤し右往左往する僕らを音の銀河へと誘っていく。最後、《言葉を笑う者は言葉に泣くと正義が囁く/じゃ正義とやらお前を生み出したのは誰/答は僕ら人間としての業》――表層的な事象や概念も、心の深層に渦巻く混沌も、クラインの壺の如く限界なく繋がったアートフォームとして織り成してみせるこの曲は、椎名林檎の総合芸術家としての真価をよりいっそう明快に浮き彫りにするものだ。表題曲と同じ石若駿(Dr)・鳥越啓介(B)のリズム隊に若井優也(Pf)を加えたピアノトリオとのカップリング曲は“紅海月の夜”。低く抑えた歌い出しから艶めかしく波打つ椎名の歌声も、ジャズのマナーの中に暴発寸前の躍動感を漂わせるアンサンブルも、真剣勝負の大人ならではの「遊び」の迫力に満ちている。(高橋智樹)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年6月号より抜粋)
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