くるり・アジカンとの3マン開催!で改めて考える、デビュー20周年のフジファブリックが「唯一無二のバンド」である理由

くるり・アジカンとの3マン開催!で改めて考える、デビュー20周年のフジファブリックが「唯一無二のバンド」である理由

既報の通り、11月の「ノンフィクション」に先駆けて、デビュー20周年を記念したライブとして4月14日に「フジファブリック20th anniversary SPECIAL LIVE at LINE CUBE SHIBUYA 2024『NOW IS』」、さらに8月4日には「フジファブリック20th anniversary SPECIAL LIVE at TOKYO GARDEN THEATER 2024『THE BEST MOMENT』」という2本のワンマンライブが開催される。

「NOW IS THE BEST MOMENT」──2公演のタイトルから見えてくるのは、20年の道程を経てなおも最高の「今」を求めて沸き立つ冒険精神そのものだ。特に、フジファブリックにとって初となる8月の東京ガーデンシアター公演は、フジファブリックの20年史を踏まえた最高到達点を刻むライブになるはずだ──と、今年2月にリリースされた最新アルバム『PORTRAIT』に触れた今はそう確信している。

フジファブリック自身12作目となるアルバム『PORTRAIT』で、メンバーがテーマとして掲げたのは「原点回帰」だった。とはいえ、幕開けを飾る“KARAKURI”のボサノバ発〜プログレッシブロック経由〜異世界行きとでも形容すべき感覚は、“地平線を越えて”あたりのファンタジックな浮遊感とは別種のものだし、“瞳のランデヴー”はフジファブリックの人懐っこい躍動感をフレデリックとの化学変化で異次元炸裂させたポップアンセムだ。

オーケストラヒット&ディスコビートという古き佳き時代のテクスチャーを2020年代型ダンスナンバーへとマジカルに転生させた“ミラクルレボリューション No.9”。メロディアスなバラードの中にバンドアンサンブルがざわめきの色彩を加える“Portrait”。大胆にハイブリッドな質感のサウンドを施した“Particle Dreams”……。《音楽やれると思わなかった頃 仲間が笑顔でいてくれて/届けたい人がいる現在を 信じられないだろう》という歌詞を通してバンド原風景と「今」を直結させる“音楽”のような楽曲もあるが、「原点回帰」の作品と呼ぶには、『PORTRAIT』は音楽的にあまりにも斬新で鮮烈な作品である──ということは確かだ。では、フジファブリックの「原点」とはなんなのか。

「これが12枚目のアルバムになるんですけど、『今までと一緒のテイストのアルバムにしてはダメだ』っていう自分たちの縛りがあるというか、(中略)ジャンル的にもどんどん違う音楽をやってきたと思うんですけども。そういった意味で、今回もそうしないといけないっていう──無理矢理やっているわけではなくて、それが自分たちの原点なんじゃないかな」

「(“KARAKURI”は)プレイアビリティをエゴイスティックに披露するような曲に聴こえるかもしれないですけど、僕らは誰もエゴイストじゃないっていうか(笑)。プログレって『弾きたいから弾いてる』っていうところがあると思うんですけど。でも、僕らのサウンドは、テクニカルな部分ももちろんあるんですけど、それは『どうポップに聴かせるか』、『いちばん耳に残るフレーズをチョイスするか』が大事なので」

『PORTRAIT』リリース時のインタビューで、フジファブリックの音楽の核となるマインドを山内総一郎はそんなふうに語っていた。山内総一郎/金澤ダイスケ/加藤慎一の卓越した演奏力/表現力を(あくまで楽曲を最適化するために)いかにアレンジの中に配置していくか。主義主張や生々しい衝動の発露としてのロックとは一線を画しながら、リスナーの心に斬り込んでいくために、バンド音楽としていかにしてポップ感を高めていくか──。それらすべてを実現した結果、誰ひとり拒まない親和性をもって聴く者の日常に寄り添いながら「すぐ隣にあるポップの異境」の存在を感じさせるバンドサウンドになった。ロックとポップの既成のスタイルや枠組みを借用することなく、自分たちの在り方を一つひとつ築き上げていったことで、「フジファブリックの音楽」と呼ぶしかないロックとポップの手触りと温度感を生み出すに至った。そういうことなのだろうと思う。

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《自分のためだよと 思ったことが/いつしか誰かの ためになりたいと/何かと比べたり 迷ってたなら/大丈夫だよと 背中を押すよ》(“Portrait”)、《まわれメリー・ゴー・ラウンド ゆめゆめ止めたりしないで/魅せてあなたのショウ・タイム あれよあれよあれよと上演だ》(“ショウ・タイム”)……『PORTRAIT』にちりばめられた「あなた」へ向けた言葉はそのまま、フジファブリックの音楽を愛し支えてきたファンへの想いであり、迷いも困難も越えて前進し続けてきたフジファブリック自身の軌跡の正しさの証でもあるのかもしれない。「ノンフィクション」での奇跡の競演はもちろんのこと、『PORTRAIT』にも刻み込まれたフジファブリック20年史のアイデンティティがより濃密に体現されるであろう「NOW IS」「THE BEST MOMENT」も今から楽しみで仕方がない。(高橋智樹)

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