記録を伸ばし続けるアスリートのように

ゲスの極み乙女『悪夢のおまけ』
発売中
DIGITAL
ゲスの極み乙女 悪夢のおまけ
世の一流たちが3分かけてなんとか聴き手に届けようとするフックをものの1分で易々深く突き刺してしまう即効性と、あえて選んだシンプルな構造に仕込む幾多のギミックを最大限活かして成す中毒性。その2点こそ川谷絵音という作家の、とりわけゲスの極み乙女というアウトプットにおける最大の強みだとすれば、その極点を刻んだ今年発表のベストアルバム『丸』を経て、なおたゆまず進化を続けていることが伝わる新曲である。川谷にしては意外な低音での小気味良いラップであっさりと耳を奪ったあと、極めてキャッチーなサビがハイトーンで歌われることで、そのギャップにすっかりノックアウトされてしまう。ここまで、わずか50秒。その後も、同じパートを繰り返す度に少しずつ変化する構成の妙と短い小節数の中にノーウェイブ的な旨みを凝縮した間奏の力で熱を高め続け駆け抜ける3分弱。どのパートの演奏も情報量が濃いが、特にどれだけ上モノが派手に展開しようとがっちりグルーヴを推進していくベースの安定感は抜群だ。このポップとしての強さ、潔さ。リピート設定がどうにも解除できなくなる。(長瀬昇)

公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする