「死ぬなよー!みんなー!死ぬなー!」サザン、22年ぶりの武道館を徹底的に振り返る!

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2015年8月17日、18日の2日間、サザンオールスターズによる全国ツアー「おいしい葡萄の旅」の追加公演が日本武道館にて行われた。今回のライヴは、サザンオールスターズにとって22年ぶりの日本武道館公演となった。RO69では、この2日目・2015年8月18日の模様を、ライヴ写真とレポートでお届けする。

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これがサザンだ。これがエンターテインメントの極みだ。そして、これが日本のポップソングの到達点を更新し続けてきたバンドが見せる最新のスタンダードだ。
サザンオールスターズ、10年ぶりの全国ツアー「おいしい葡萄の旅」追加公演ファイナルにして、サザンにとって実に22年ぶりの日本武道館公演。このあまりに貴重な一夜は、サザンの歴史が王道を表現し、その矜持が新たなポップを生み出してみせる凄まじい一夜となった。
なにせ、トータル37曲、最後の挨拶まで含めて約4時間である。これだけの物量、これだけの時間、サザンが彩ってきた時代時代の名曲を浴び続けたわけだ。言うまでもなく忘れえぬ体験となった。

18:00定刻通りにライヴはこのツアー恒例の「葡萄の旅」へ誘うメッセージ映像からスタート。「大きく育った『葡萄』をみんなで喜び味わう旅 さあ、いよいよ収穫祭のはじまりです」という字幕がゆっくりと映し出されていく。丁寧で厳かで思慮深いこの立ち上がりは何度体験してもいい。まさに『葡萄』という傑作が纏っている空気感を如実に伝える幕開けだった。
1曲目は1984年に発表された“Tarako”。シンセサイザーのリフが軽快に弾むイントロが大歓声を呼ぶ。全英語詞で歌われるメロディに合わせ手拍子が巻き起こる。“Tarako”はサザン21枚目のシングルなのだが、続くのは一枚遡って20枚目のシングル曲“ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)”。80年代のエッセンスをたっぷり振りまきながら、一万二千人の拳を誘っていく。桑田が歌詞を忘れ、会場に大喝采が沸き起こるのも最高にメモリアルな瞬間だ。みんな、本当にサザンが大好きなのだ。
何度も何度もクライマックスを迎え続けることになる約4時間だったが、あえて最初のヤマ場を挙げさせてもらうとするなら、それはやはりこのツアーの主役=『葡萄』の楽曲が9曲連続で披露されるブロックであった。
“青春番外地”が苦く淡い青春とネオン煌く歌舞伎町の風景を、“イヤな事だらけの世の中で”が人生の意義と妙味を、“Missing Persons”が同時代者としてのシビアなメッセージを、そして“平和の鐘が鳴る”が悲しみの青空に広がる祈りの情景を、情感豊かにたまらなくセンチメンタルに描き出していく。“ワイングラスに消えた恋”では「歌のゲスト、マダーム、由子りん!」という桑田の紹介から、ダンサーを従えた原坊が、華麗なる歌謡ショーを見せてくれる。それにしても、サザン史上でもここまで様々な人生的シーン、あるいは人が生涯を通して見せるたくさんの表情を刻み込んだアルバムは稀有なのではないだろうか。『葡萄』はそう、今年38年目を迎えたサザンオールスターズだからこそ描くことのできた「実感」の塊のようなアルバムなんだとあらためて思う。
次なるクライマックスはメンバー紹介――からのサプライズである。桑田が嬉しそうに語り出す。「武道館は今から49年前、The Beatlesが来日してね。当時はやっぱり慣れてなかったんでしょうね、日本のスタッフもね、警備の人がいっぱいいてね――」。そこからポール・マッカートニーのマイクがうまく止まっていなかったというエピソードやポールとドリフターズにまつわる「都市伝説」を披露し、しっかりと笑いを重ねた桑田は楽しそうに、「じゃ、ビートルズやってみよっか」とひと言。なんとも嬉しい武道館サプライズ。
曲は“HELP!”だ。サザンメンバーはもちろん、サポートメンバーも加わっての分厚いコーラスが武道館全体に響き渡り、一万二千人は「レジェンド」と「レジェンド」の思わぬコラボに酔いしれる。
ここからは、サザンファン歓喜の(つまりここにいた一万二千人のほとんどすべてが歓喜する)新旧の名曲を織り交ぜた怒涛の中盤戦へと突き進んでいく。“死体置場でロマンスを”が「T-BONE! T-BONE!」の大合唱を巻き起こし、“Computer Children”がクールなビートで体を揺らせば、続いて“栞のテーマ”“あなただけを〜Summer Heartbreak”“真夏の果実”と問答無用の「サザン・スタンダード・ラブソング」がオーディエンスそれぞれの脳裏にそれぞれの夏の風景を描き出していく。楽しさと嬉しさと幸福と感傷のメーターが振り切れるような、まさに至福としか呼びようのない凄まじい時間が、飛ぶように過ぎていく。
さらなる多幸感が止むことなく押し寄せてくる。再び『葡萄』楽曲に戻って、路地裏のセットで桑田が切々と歌う“道”、一際大きな手拍子が起こり、これまた「今のサザン」が描くべき哀愁が綴られる“栄光の男”、そして、巨大なスタジアムコーラスが武道館を包み込み、一万二千人の手元のリングライトが白く美しく光った“東京VICTORY”。さらに“アロエ”では「勝負! 勝負! 勝負出ろ!」のパンチラインがひとりひとりの人生を鼓舞するように飛び込んでくる。絶対のポジティヴィティがひとりひとりのかけがえのないエネルギーを注入していく。みんなどんどん元気になっていくように見える。
そして、サザンと武道館は大団円へと向かっていく。“マチルダBABY”“エロティカ・セブン(EROTICA SEVEN)”“ボディ・スペシャルⅡ(BODY SPECIAL)”――というのは、人生を通して、何度聴いたかわからない押しも押されもせぬ名曲だが、今この3曲を脳内再生するだけでも、これまでに感じたことのない余韻と興奮が押し寄せてくる。このとき、武道館の一体感は本当に素晴らしかった。サザンにしか許されぬ、有無を言わさぬ王道の説得力。と同時に、“エロティカ・セブン”の終わりに水着のダンサーにちょっかいを出すお約束もまたやはり、とてつもなく感動的な画に写ったりもする。すげえ。凄すぎる。桑田佳祐はポップだけでなく、ショーにおける「ギャップ」のスタンダードもまた作ってきたのだ――ということもあらためて書いておきたいと思う。
本編ラストは“マンピーのG★SPOT”。桑田は被り物からティッシュをまきながら、バンドはえげつないほどの興奮を振りまきながら、一万二千人を絶頂へと導いてみせた。

アンコールでは“匂艶 THE NIGHT CLUB”“ピースとハイライト”“みんなのうた”と、これでもかの展開へ。“みんなのうた”では、ラスサビの直前、「嗚呼 武道館 またやろうね」と、粋なフレーズを挟み込む。桑田は曲が終わり、渾身の力で「どうもありがとう!」と叫ぶ。
「千秋楽、おかげさまでこのコンサート、無事に収まりそうでございます! コンサートでございます。我々の世代はセトリじゃありません、曲順でございます。コンサートでございます」と笑いを誘った桑田は、「ありがとね! またやりましょうね!」と呼びかける。そして最後の4カウントが始まる。曲は“蛍”。
サザンが描き続けてきた「夏」の風景に、恋でも艶でもトキメキでもなく、静かで穏やかな「晩夏」の彩を加えるこの新たな名バラードは、燃え上がった武道館に一筋の涼風を吹かせるようだった。灼熱の炎で燃え上がる究極のエンターテインメント、そして何より深く残り続ける余韻――そう、これがサザンのライヴなのである。

8月18日、日本武道館。実に3時間55分。
桑田佳祐は感謝を何度も何度も伝えたあと、「死ぬなよー! みんなー! 死ぬなー! バイバーイ! サザンオールスターズ!」と叫び、武道館のステージを降りていった。その叫びが今も忘れられない。(小栁大輔)

●セットリスト

01. Tarako
02. ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
03. ロックンロール・スーパーマン ~Rock’n Roll Superman~
04. 青春番外地
05. イヤな事だらけの世の中で
06. バラ色の人生
07. Missing Persons
08. 平和の鐘が鳴る
09. 彼氏になりたくて
10. はっぴいえんど
11. 天井棧敷の怪人
12. ワイングラスに消えた恋
メンバー紹介~HELP!
13. よどみ萎え、枯れて舞え
14. 顔
15. Happy Birthday
16. 死体置場でロマンスを
17. Computer Children
18. 栞のテーマ
19. あなただけを ~Summer Heartbreak~
20. 真夏の果実
21. おいしいね~傑作物語
22. Soul Bomber(21世紀の精神爆破魔)
23. 01MESSENGER~電子狂の詩~
24. ブリブリ ボーダーライン
25. 道
26. 栄光の男
27. 東京VICTORY
28. アロエ
29. マチルダBABY
30. エロティカ・セブン(EROTICA SEVEN)
31. ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL)
32. マンピーのG★SPOT
(encore)
33. 匂艶 THE NIGHT CLUB
34. ピースとハイライト
35. みんなのうた
36. 蛍

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